性別≠不一致
誓い

耐えきれなくなって逃げ出すとか、俺って本当に子供だな。


潮風に当てられて、のんびりとそんなことを思う。


『スピカ』から飛び出して、行くあてもなくブラブラと彷徨っていたら、港のすぐ近くにあるこの公園に自然と足が進んでいた。


スピカとの散歩コースで、いつもここで休憩を挟んでいるからか、無意識にここに来てしまったのだろう。


ベンチに腰かけて溜息を一つ。


嫌がおうにも思い出されたのは、竜司くんの首筋につけられたキスマーク。


なに感傷に浸っているんだ。分かりきってたことじゃないか。


こんな中途半端な人間に、まともな恋愛など出来ないことぐらい覚悟していたはずだろ。


完全な男になる勇気もなければ、女になりきる覚悟もない。


触れたいと思うのに、触れてしまったら俺は女になるような気がして。


男の俺がそれを拒んで、でもやっぱり好きって気持ちに嘘はつけなくて。


心と身体が反発しあい、結局適当に言い逃れて問題を先送り。何の解決にもなってない。
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