この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

声が聞こえる

その後、ひとしきり騒いだ夏美や美代だったが


やはり突然の労働に疲れていたのか少しするとおとなしくなり


店内には和やかな空気が流れていた。



「なぁ、マサルさん」


ガタガタと椅子を床に擦りながら


おにぎりを頬張る俺の隣に山吹が椅子をつけてきた。


「ん?」


いつになく神妙な顔つきの山吹は、少し離れた位置に固まって座る美代たちを見る。


そんな山吹に俺が首をかしげると


山吹は俺の耳元に口を近付け、小さな声で囁いてきた。


「あの黒髪の子ぉな」


「ああ?」


「マサルさんの正体知っとるんやろ?」


「………!!」


山吹の言葉に俺は米粒を吹きそうになった。


「な、なんでそれ…」


「まぁ、俺も仕事柄大抵の事なら全部聞こえるからな」


「は…?」


慌てて口元を拭う俺に山吹はさらに続ける。


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