この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「わかった。次は海老だな?」


俺は今度は海老に話しかける。


「お前の名前は?」


『ん?次は俺かい?俺は車海老の弥彦だ。俺もアイツみたく飛べば良いのかい?』


「そうだ。悪いな…出来るか?」


『あれくらい出来るさ。けどこんなんで本当に帰れるとは思えないけどねぇ』


弥彦は尻尾をふるふるっとさせると、


佐之助と同じように3回転して、パチャッと小さな水しぶきを上げて生け簀から桶に飛び込んだ。


「「…!!!?」」


平あじの佐之助に続き、車海老の弥彦までもがジャンプを決め


マサル以外の全員の目が点になっていた。



「おま…どうなってんの…?うちの魚に何したんだ?」


ヒゲ男が呆然と俺を見る。


「別に…ただお願いしてるだけだ」


俺はそう言うと生け簀を振り返った。


生け簀の中にはまだ貝や魚が何匹かいるが、もう充分だろう。


俺は絶句している責任者の前に立った。


「次はあんたが約束守る番だぞ。アイツらを海に帰してやってくれ」


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