この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
『…………』


佐之助は生け簀の中を泳ぎながら桶に目をやった。


『ジャンプ…多分できやすけど…本当にそれしたら海に帰れるんでやすか?』


佐之助の目が疑心と希望に揺らぐ。


「あぁ。あと出来れば3回ほどまわって貰えると助かるんだが」


『……………』


佐之助は少し間をおいてから


『…約束でやすよ』


と言うとクルクルッと小さく体を3回まわした。


そして水面に浮上すると生け簀から飛び出した。


水がパシャンとなり、そのまま佐之助は頭から桶に飛び込む。


「「……!!!」」


佐之助の行動に、その場にいた全員が息を飲んだ。


大林リポーターは目をパチパチさせている。


「…これで良いか?」


俺は大林リポーターを見た。


「え…?あ…では、次は海老で同じように…出来ますか?」


大林リポーターはそう言うと責任者の顔を見た。


責任者は驚きで固まった顔をハッとさせてとりあえず頷いた。


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