この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
夕暮れの住宅街に俺と美代の笑い声が響く。



美代…


俺、美代といると落ち着く。


地位も名誉もいらない。


偽善者でもいい。


ただ美代とこうして笑い合っていられれば


美代の笑顔を見ていれば


俺はそれだけで幸せなんだ―…













そんな時だった。




―――ドクンッ




「……!!?」


俺の心臓が大きく跳ねた。




え……??


俺はスーパーの袋を持っていない方の手で胸を抑える。



く…苦しい…



だんだんと肺に酸素が足りなくなってくる。



この感じ………



そして俺は直感した。



これは……昨夜と同じ症状かもしれない。



俺は出来るだけ平静を装いながら足を止めた。


「み、美代…」


「ん?」


足を止めた俺に美代もくるりと振り返る。


「俺…ちょっと用を思い出したから…はぁ、先に帰っててくれるか?」


俺はなんとかそう言うと、スーパーの袋を美代に託した。


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