この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「あ、なんかメールがきた~」


美代は箸を置くと、パカッと携帯を開いた。


画面を見て美代は目を丸くする。


「わぁ珍しい…パパからだ~!」


「ん?伸太郎か?」


「うん。あ、なんか昨日のTV見たらしいよ。画面の端に私も映ってたんだぁ///」


「へぇ?」


「追伸、久しぶりに逢いたい、だって。」


俺と美代が実家を出たのは春だった。


伸太郎と離れてもう5ヶ月近く経つんだな…。


実家では多種多様な動物を飼っているから、伸太郎からは家を離れて逢いに来れない。




「…せっかく夏休みだし。ちょっと帰省するか」


メールを返信している美代に、俺は提案してみた。



伸太郎は俺の育ての親だ。


俺を育て、たくさんの事を教えてくれた伸太郎。


いつ消えるやもしれない俺の命。


だから…


俺は消える前にもう一度、伸太郎の顔が見たかった。




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