この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
『勘三郎はいるっチュ!?』


忠兵衛は草むらに向かって叫んだ。


ガサガサッ

忠兵衛の言葉に草むらからもう一匹ネズミが現れる。


忠兵衛は勘三郎と呼ばれたネズミにゴニョゴニョと指示を与えた。


勘三郎は小さく頷くと、素早く草むらに消えていった。


そして、忠兵衛が俺を見上げる。


『チュ!こいで何かが分かればあんちゃんに使いのネズミが伝えるようにしたっチュ』


「あ…ありがとう!」


忠兵衛が小さな天使に見えた。


俺は忠兵衛の小さな手を取ると頭を下げた。


『てやんでぃ///ネズミの情報網を使えや大したことじゃねっチュ』


忠兵衛は照れた。


『それに…実はあんたがずっと緑地内で何かを叫んでるのはオラ達みんな聞いてたチュ。言葉は分かんねかったけど、あんちゃんがあんまり必死だからよ、みんなして噂してたっチュよ』


「……………」


『探してる子さ見つかるといいっチュな』


忠兵衛はチュチュっと鳴くと、暗い草むらの中に消えて行った。



< 378 / 513 >

この作品をシェア

pagetop