先見の巫女


「…もう一度…あなたを正しき導きの神へ…」


雛菊が右手を奥狐の神にかざすと、雛菊の光が奥狐の神を包んだ。


『…我は…どうなる…』

「あなたは…もう一度
奥狐の神として彼等を護り導くの…」


その為に邪気の浄化を…


「翡翠の光よ…時を越え本来在るべき姿へ還せ!!」


翡翠の光が弾け飛び、奥狐の神は狐の姿から、人型へと姿を変えてゆく。


『…あぁ…温かい…温かい…』


そう言って奥狐の神は涙を流した。


雛菊は奥狐の神の頬へと両手を伸ばし添える。


人間の青年の姿をした美しい神に笑顔を向ける。


「お帰りなさい…気高く美しい奥狐の神……」

『…翡翠龍の巫女よ…我は…』

「あなたが成すべき事は…あなたにしか…出来ない…誰よりも彼等を愛しているあな…しか……」


体から力が抜けていく。力の反動が思ったよりも早くきたようだ。


でももう大丈夫だろう…
奥狐の神が邪気に惑わされる事はもうない。


本来の神気を取り戻したのだから…


「雛菊!!!」


意識を手放す寸前、朱雀の声が聞こえた気がした。






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