先見の巫女

呼び声



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此処は何処なのだろう…
目を開けて見た世界は
真っ白だった。


体という器は無く、
魂という存在……


不思議と悲しくはなかった。
此処は温かくて…
何故か懐かしい場所だったから…



『………あなたもまた…
私と同じ運命を辿ったのですね…雛菊…』


声が聞こえる…
知らないはずなのに
あたしの一部であるかのようなその声に意識を向ける。


『あなたは幸せだった?』


…幸せだった…
護る可きモノが在った事、愛する人がいた事…


あたしは…幸せだった…


『…そう……
同じ運命を辿った私達だけど…
お互いに幸せを護る為に
選んだ道だったんだもの…』


その声はあたしに語りかけるというより、自分に語りかけるように言う。


この声の主が誰なのか、
分かった気がした。


だって彼女は………


あたしと同じ魂である
羽優だから…


『ねぇ雛菊…
私では壊せなかった黒闇龍の災厄の連鎖をあなたは止めた。これでもう…』


羽優はそこまで言って
口を閉ざす。


続きを聞かなくても
羽優の言いたい事が分かる。


同じ魂を持つからなのか…
否…あたし達が同じ幸せを護る為に戦った同士だからだ。


……もう……
行かなければ……


あたしと羽優の魂は
すでに役目を追えてしまった。
此処に在りつづける事は出来ない。


『でもせめて…来世では…
私達の魂とあの方々の魂が再び出会い愛し合う事を…』


………願う……



朱雀…
愛しています…
それは終わる事の無い
永久の誓い…


何度も生まれ変わり
そしてあなたに出会い、
あなたを愛する…


再びあなたに出会えたら…


あたしは……
きっとあなたを離さない…


だから朱雀……
少しの間…さよならだね…


愛しています…
永久にあなたを………
悠久の時を越えて……







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