いい意味で
第二章 旅路
そのときの彼はそんな事も露知らず、暢気にイエモンの歌を熱唱してるのであった。

第二章 旅路

りうを拾い、僕等は首都高から東北道に乗り、りうの会社の先輩で富岡さんという秋田出身の人がいるのだが、
深夜にも関わらずその先輩を電話で起こし、秋田情報を教えてもらっていた。

あ!そういえば途中、秋田行きを知らされたりうは、おんちゃんの飲み物に鼻くそを入れ、おんちゃんが絶叫をする。というドラマティックさとは程遠い結末で、このどっきりは終了した。

まぁ、この話はいいんだよ。とりあえず富岡さんの情報によると、秋田には大した見所はなく、だが秋田の女の子は可愛いのが多いらしい。そんな事を聞いて、僕等のテンションが上がらない訳がない。

「俺ぜってぇ彼女つくる!!」とおんちゃんは息を巻いていた。

僕も僕で、「地元の女の子と呑みたいよなぁ!!」なんてワクワクしていた。

りうに限っては、「風俗いきてぇよなぁ!!」なんて叫んでいた。

28歳で三人とも彼女がいないから出来ることだよなぁ!!なんて皆で笑いながら、
今しか出来ない事をしている気がして、僕は嬉しかったんだ。

好きな曲をかけながら、街の灯りが少なくなっていく事もね。

道中は交代で運転して
運転してない時、おんちゃんとりうはグースカ寝ていた。

僕に限っては、乗り物の中では寝れない性格で、夜の闇を抜け、
明け方やっと景色が見えはじめ、山や野が過ぎては小さな街が出てきたり、そんな風景を眠たい頭でボーっと眺めていた。

僕は一月に、7年間付き合った彼女のいくちゃんと別れ、まだ忘れられずにいた。

はじめてみる風景や変わったものを見ると、いくちゃんに見せてあげたいなぁ。なんて思う。色んな思い出が胸を締め付けては消え、風景は淡々と流れていく。

途中、まだ雪が沢山積もっているところもあり僕等はびっくりした。

東京はもうすぐ桜の季節だというのに、北国の山間はいまだ雪が残っていて、予想だにしなかった展開に、僕等のテンションは更に上がっていく。

いや、一人、薄着の不安そうな奴を除いては。
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