一人こっくりさん
『……部屋から出て』

 チイラが言った。

「――――は?」

『さっき北の窓を閉めたから、こっくりさんはこの部屋から出れない』

 見ると、確かに閉まっていた。
 いつの間に……。

『ここは僕がどうにかするから、お兄ちゃんと逃げて』

 え…………。
 でもチイラは……。

 俺の表情を読み取ってチイラは言った。

『僕は大丈夫。大体貴方が居ても足手まといだから』

 ス、ストレートに言いやがって……。

『優、行こう』

 黙っていた優が俺を支えながら立った。
 俺はそのまま駿に身を任せた。

『知依……頼んだよ』

 駿は一言そう言って、部屋を出た。
 俺も駿と一緒に部屋を出た。

 あぁ……駿も、心配なんだろうな。
 妹の事が。


 俺と駿はリビングに入った。
 そして駿は俺をソファーに寝かせた。
 肩はずきずき痛むし、まだ少し血が出る。
 意識がだんだん遠退いていく気がした。

「……はぁ……は……っあ……」

『優……』

 駿が口を開く。
 俺は遠退く意識の中、駿を見た。

「馬鹿かお前……何泣いてんだよ」

『ごめん……』

「いつ……ものマイペースぶりはどこ行ったんだよ……」

 お前らしくねぇぞ……?

 そう言って、俺は意識を手放した。

 最後に駿が、

『ありがと』

 って言った気がした。
< 30 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop