一人こっくりさん
〔まず、こっくりさんとは人の憎しみや怒りの塊が人になったようなものです。
 つまり、人の悪い心の塊です。〕

 悪い心か……。
 人が誰しも持っている、悪い心。
 人を憎み、妬み、恨む、醜い心。
 憎悪、怒り、狂気、……。
 それらが集まって出来たのが、こっくりさんか。

〔そんなこっくりさんを消す方法は簡単です。
 こっくりさんの持つ悪い心を全て取り除けば良いのです。〕

 そうか、成る程!!
 じゃあ俺らは助かるのか……!!?

〔ただし、〕

「ん?」

 ただし?

〔悪い心を取り除くと、その悪い心は取り除いた人の中に吸収されます。〕

 はい?
 えーと、つまり……?

『こっくりさんは消えるけど、悪い心自体は消えないで取り除いた人に移ってしまう――』

「ぎょわっ!!」

 俺は変な声をあげてしまった。

『今、僕の存在忘れてたでしょ』

 図星。

「すみません……」

 どちらが年上なんだか。

 俺は本に目を戻した。

〔悪い心を吸収した人間は、心を悪に支配されてしまいます。
 それ程悪い心の力は大きいのです。〕

 何!?
 心を、支配される――なんて怖いのだろう。

〔支配された人間は、悪に取りつかれ死んでしまう可能性が多いです。〕

 俺はこの文に、絶望を感じた。
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