ショコラ~恋なんてあり得ない~

 その時、ふと顔を正面に戻すと、大きくそびえ立ったホテルの入り口から一組の男女が出てきた。

そのどちらにも見おぼえがあった。
マサと和美ちゃんだ。


「あれ?」


宗司さんも気付いたのか、あたしに目配せをする。
あたしは人差し指を立て、「しー」と小声で言う。

このロイヤルホテルのレストランには、親父の昔の知り合いがいるはずだ。
そのツテを使って、自作のケーキを出してもらったのかしら。

つまり、あたしが苛々と宗司さんを待ってる間、二人はバーステーパーティを楽しんでたって訳なのね?

くそう。何だか悔しいわね。

夜目で良くは見えないけど、ふわふわのスカートを着た和美ちゃんがマサを見上げてる。
マサの右手は彼女の左手をしっかりと掴み、左手にはプレゼントだろうか、大きめの袋が二つ。

いつもと違って二人ともおしゃれで、遠めなのに満面の笑みなのだろうということも伝わってきて。

そうね、彼女と行くところって、こんな風なおしゃれなところよねって、
妙に納得してしまった。


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