ショコラ~恋なんてあり得ない~


そしてきっと、マサは今頃これから彼女とどうしようかなんて、やましいことも考えているだろう。
いつものあの態度とは違う、焦りにも似たものを抱えながら、彼女の事を見るんだろう。


「詩子さん?」


宗司さんの声に我に返って、彼を見つめる。

不思議そうにあたしを覗きこむ彼の瞳はとても澄んでいて、何のやましさもなさそう。
きっとマサが考えてるようなことは、欠片も考えていないに違いない。

あたしは、彼にとって女の子じゃないから。


「……」

「どうかしたの? 黙っちゃって」

「ううん。別に」


そう。
ラーメン屋なんて、女の子をデートに誘うようなところじゃない。

最初っからそうだった。
居酒屋行くって時だって、『愚痴を聞いてほしい』って言ってたんだし。

宗司さんがあたしにする扱いは、女の子に対するものじゃない。
どちらかと言えば、同性の友達にするように扱われている。

別に、それでいいわよ。
こっちだって気楽だし、楽しいし。

なのに。
どうしてあたしはこんなに傷ついているの?



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