ショコラ~恋なんてあり得ない~
「じゃあ試作品を作ってみろ。マサ、それから詩子。それぞれがだ」
「え? あたしも?」
「そうだ。お前が発案者だろ?」
「でも待ってよ。あたしがマサに敵う訳……」
無いじゃない。
そう思ってマサを見ると、奴は奴で肩をすくめる。
だって今までだって、店で出す商品は親父かマサしかつくってないのに。
「お前だってマサと同じ専門学校通って、ちゃんと調理師免許とったんだろうが。その為の金を俺は払ったつもりだぞ」
ええ、一応持ってるけどさ。
でもよ、お義理でもらったようなもんよ?
太鼓判押されたマサと一緒にされるのはいかがなもんなの?
「でも……」
「とにかく、来週までにお前らそれぞれに案をまとめてこい。一度試食会するぞ。それで採用するかどうか決めよう」
「父さん」
「口答えなし!」
珍しく強気で言いきって、親父は厨房の方へ戻ってしまう。