ショコラ~恋なんてあり得ない~


「じゃあ決まりだ。君もありがとうな。参考になった」

「いえ、俺はただで食べさせてもらえてラッキーでした」

「そうか。良かったらまた食べに来てくれ」

「ハイ。あの……」


宗司さんはちらりとあたしを見て、それから困ったように笑う。

どうしよう。
何か言わなきゃって思うけど、なんかうるさそうな親父の視線が気になる。

なんてったって厨房から聞き耳を立てる人だもの。
こんな目の前で話してたら聞かない訳ないわ。


「あの、今日はありがとう」

「どういたしまして。あの、……じゃあ俺はこれで」


結局、大したことも話せないまま宗司さんが店の扉から出て行くのを見送った。

あーあ。
折角久しぶりに会えたのに。

フラッペ食べてくれた。
ちゃんと、えこひいきなくマサのと比べてくれた。
それが嬉しかったって、ちゃんと言いたかったな。

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