ショコラ~恋なんてあり得ない~


「……片づけなきゃ」


目の前にはフラッペ用のグラスが一杯。
洗って、開店準備しなくちゃ。


「詩子、ちょっと買い物行って来い」

「え?」

「牛乳でいい」

「でいい、って。父さん」

「いいから行って来い。で、戻る時に店の看板を【OPEN】に替えてこい」


それって。
店の開店時間まで出てきていいって事?


顎を触って、にっこりと笑う親父。

いいの?
宗司さんを追いかけてきても。


「早くいけ」

「う、うん」


エプロンを外して、マサに向かって投げる。


「何すんだ!」

「そこに置いておいて!」


駆け出すように扉に向かうあたしに、親父が財布を投げてくる。

< 163 / 303 >

この作品をシェア

pagetop