ショコラ~恋なんてあり得ない~
「でも学校は、躓いてる子だけじゃないぞ? 出来すぎる子もいるよな。
そういう子が同じ教室にいたときどうすんだ? 分からない子の為にいつまでも待たすのか?」
「……それは」
彼の目が泳ぐ。
うーん。ここで迷っちゃうところが宗司さんだな。
適当なことを言ってその場をしのいじゃえばいいのに。
「……そうですね。それは考えてませんでした。
確かに俺は考えが色々甘いみたいです」
「面接もあるんだろ? さっきみたいなシャキッとした態度の方がいい」
「はい。ありがとうございます」
あれ。
何だか宗司さんと親父の間の空気が柔らかくなってきた。
「まあ、頑張れよ」
「はい」
最後はお互い笑いあって。
なんなの。仲裁に入ったあたしがバカみたいじゃないの。
「じゃあ、俺帰ります」
「ついでに詩子を送ってやってくれないか。もう上がるとこなんだ」
「いいですよ。じゃあ、待ってるね詩子さん」
「う、うん」
慌てて厨房に戻って帰り支度をする。
二人きりは嬉しいんだけど。
さっきの男同士の会話に入れなかったことが悔しくて、宗司さんに冷たく当たったまま家まで帰った。