ショコラ~恋なんてあり得ない~

でも一つだけ、ちゃんと聞かなきゃいけないことがある。

吐しゃ物のお掃除してくれたのはあなた?
汚くてイヤだったでしょう。

言わなきゃいけない……のに、珍しく口が重い。
景気づけにあたしはわざと違う話を振った。


「宗司さん、お勉強?」

「うん。まだ迷ってるんだけど、今年も受けてみようかなと思ったりもして」

「何を?」


聞き返したあたしの声の後、返事が来ない。
一拍以上間があくと、どうしてこういたたまれない気分になるのだろう。


「あ、あの」


何か違う話をと慌てて宗司さんを見ると、彼の方はじっとあたしを見つめたまま、何も気にしていないようにゆるりと笑う。


「教員採用試験」

「え……」

昨日はあんなに頑なだったのに。
心境が変わったのは何で?

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