ショコラ~恋なんてあり得ない~

「もう一度だけチャレンジしてみようかなって」

「ど、どうして?」


そう問えば、少し恥ずかしそうに笑って頬をかく。


「詩子さんに嫌われたくないからねぇ」

「な」


なによ。
そんなドキドキするような事言わないで。


お盆をギュッと握りしめて、胸元を隠す。
脈打つ心臓が見える訳でもないのに、なんであたしはこんなにビビってんの。


「だから時々ここで勉強させてね」

「え?」

「仕事始まる時間まで」

「仕事……」

「うん。小学生を持ってる日は三時、後は四時からなんだ」


今は二時。
一時間くらいはここにいてくれるって事?
毎日?


「詩子さんがイヤじゃなかったら」


イヤじゃない。
イヤな訳ないじゃない。

どうしよう。
体の中でポップコーンでもはじけてるみたいに、内側からすごい力が沸き立ってくる。
こういうのを、心が躍るって言うの?

さっきまでとは違う心臓の動きに、精神の方が追いつかない。

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