ゼロクエスト ~第2部 異なる者
一体何が起こっているのか分からなかった。ただ頭が混乱して、そこで制止しているだけだ。
だが気付いてしまった。
ヤツの背に、黒い大きな翼が生えていることを。
(―――!! 魔物!!?)
魔物なら見たことがあった。
行商人である父の雇った護衛術士が、あたしたちの目の前で戦っていたからだ。
それらは全てヒトとは違う、異形の姿をしていた。
そして人間に変化する魔物がいることも、以前から話には聞いていた。
ゼリューはヒトのような容姿をしていた。
しかし人間には翼が生えていない。
その上『人間』だった頃にはなかった、刺青のような模様が、頬付近に浮かび上がっている。
不意にヤツが、ゆっくりとこちらに顔を向けた。
真紅の双眸。
今までに見たことのない、射貫くような冷たい瞳。
いつも優しく微笑みかけてくれる、そんな眼差しではない。
それ以外を、あたしは知らない。
目があった途端、あたしは急に恐ろしくなった。思わず後ろへ身を動かしていた。
しかし落ちていた瓦礫に足を取られ、転んでしまう。
この場から逃げ出したかった。だが身体は動いてくれない。
そこには両親の姿が見える。
もう動かないであろうことは、幼いあたしにも直感で分かっていた。
だが気付いてしまった。
ヤツの背に、黒い大きな翼が生えていることを。
(―――!! 魔物!!?)
魔物なら見たことがあった。
行商人である父の雇った護衛術士が、あたしたちの目の前で戦っていたからだ。
それらは全てヒトとは違う、異形の姿をしていた。
そして人間に変化する魔物がいることも、以前から話には聞いていた。
ゼリューはヒトのような容姿をしていた。
しかし人間には翼が生えていない。
その上『人間』だった頃にはなかった、刺青のような模様が、頬付近に浮かび上がっている。
不意にヤツが、ゆっくりとこちらに顔を向けた。
真紅の双眸。
今までに見たことのない、射貫くような冷たい瞳。
いつも優しく微笑みかけてくれる、そんな眼差しではない。
それ以外を、あたしは知らない。
目があった途端、あたしは急に恐ろしくなった。思わず後ろへ身を動かしていた。
しかし落ちていた瓦礫に足を取られ、転んでしまう。
この場から逃げ出したかった。だが身体は動いてくれない。
そこには両親の姿が見える。
もう動かないであろうことは、幼いあたしにも直感で分かっていた。