ゼロクエスト ~第2部 異なる者

第5節 エリスの決意

「それは……俺の役目……!」

アレックスは地面に片手を付き、膝を折り曲げて立ち上がろうとしていた。

が、直ぐにまた崩れ落ちてしまう。

「!? ちょっと。あんた腕、怪我しているんじゃないの」

私は初めて気が付いた。

大きな外傷らしきものは見当たらなかったが、その部分だけ内側から赤黒く膨れ上がっていたのだ。しかも棒状のようなもので固定されている。

「この程度、俺の根性で……」

コイツ、こんな状態でまだ言うか。

「駄目よ、怪我人のあんたはここで大人しくしていて。あとは私がやるから」

「だが……ッ」

「あんたにも役目があるように、私にも役目はあるの。
これからそれを果たしに行くところなんだから、邪魔をしないで」

その言葉に、アレックスは初めて驚きの表情を見せた。

「君の役目?」

「そうよ。私はあの黒いものを壊しにいく。
あれが瘴気を撒き散らし、魔物を呼び寄せている元凶なのよ。
あの中心にあるモノを破壊しなければ、何れ大変なことになるわ」
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