ゼロクエスト ~第2部 異なる者
相手は魔物だ。

露出度の高い服を装っており、人間の成人女性に近い容姿もしていたが、角と尾が付いているのは外見上明らかだった。

その上プライドが高く、ヒトを常に見下しているような中位クラス以上の魔物。

その魔物がこちらに対して「取引」などというものを持ちかけてきた。

「貴様のような輩にこのような取引など、妾としても実に不本意な極みではあるのだが……しかしどうやら、利害が一致しておるようだからな」

「どういう意味だ」

魔物はそれには答えず、薄い笑みを浮かべたままでこちらへゆっくりと近付いてくる。

だが彼女は動くことができなかった。

精神力を根こそぎ奪われでもしたかのように、全身を動かすことができなかった。

残っている気力を振り絞り、辛うじて身体だけは起こしていたのだが、いつ倒れても不思議ではなかったのだ。

魔物は目の前に腰を下ろすと彼女の顎をおもむろに持ち上げる。

瞬間、彼女は顔を顰めた。綺麗に磨かれた長い爪が頬に食い込んできたのだ。

よく研がれたそれは皮膚を裂き、傷を付けた。顎を砕くほどの力でその細い指に締め付けられている。

しかし予想に反し、魔物はそのままの体勢で耳許へ唇を近づけた。



「貴様の目的――ゼリューを殺したいのだろう?」
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