ゼロクエスト ~第2部 異なる者
その先には、左眼を黒い眼帯で覆っている隻眼の女性がいた。
年齢は二十歳前後くらいだろうか。
線の細い綺麗な顔立ちであるが、私と同じ翠(みどり)色をした右眼は鋭く、どことなく近寄りがたい雰囲気を持っていた。
髪は錆色で短髪。それに服は濃紺の道着。この格好を見れば、彼女がモンク(格闘術士)だということは一目で分かる。
「まさかこのような場所に〜魔物が紛れていたなんて〜思わなかったです〜」
エドののんびりとした声で、私は初めて気が付いた。
モンクの持っている男の顔を改めて見てみると、毛深い顔の中心に目玉が一つ。切り離された胴体の破れた服の隙間からは、灰色の翼が覗いている。明らかに人間ではない。
(でもさっきは人間の……そうか、化けていたのね)
先程まで沸騰しそうだった心臓が、徐々に収まっていくのを感じていた。私はようやく深呼吸をし、心を落ち着かせる。
「エリスさん〜大丈夫ですか〜? なんだか顔色が〜悪いようですけど〜」
「だ、大丈夫よ。ちょっとビックリしただけだから。……でも魔物、だったのね」
モンクは横たわっている胴体へ歩み寄ると、片腕だけで軽々と担ぎ上げ、周囲へ素早く目を配った。
見物していた群衆たちは刃物のような視線に畏怖したのか、自然と左右へ立ち退いていく。
彼女は割れた道筋へ歩みを進めると、何事もなかったかのように颯爽と立ち去っていった。
周囲の野次馬たちはこの一連の行動を、呆気に取られながら見ているだけだった。勿論私もその一部だ。
「エリスさん〜立ってください〜。そろそろ行かないと〜日が暮れてしまいますよ〜。アレックスさんたちも〜待ちくたびれているかもしれません〜」
座り込んだ姿勢のままでいる私にエドは声を掛けてきたが、その場を動くことができなかった。何故なら。
「エドごめん……腰、抜けた」
年齢は二十歳前後くらいだろうか。
線の細い綺麗な顔立ちであるが、私と同じ翠(みどり)色をした右眼は鋭く、どことなく近寄りがたい雰囲気を持っていた。
髪は錆色で短髪。それに服は濃紺の道着。この格好を見れば、彼女がモンク(格闘術士)だということは一目で分かる。
「まさかこのような場所に〜魔物が紛れていたなんて〜思わなかったです〜」
エドののんびりとした声で、私は初めて気が付いた。
モンクの持っている男の顔を改めて見てみると、毛深い顔の中心に目玉が一つ。切り離された胴体の破れた服の隙間からは、灰色の翼が覗いている。明らかに人間ではない。
(でもさっきは人間の……そうか、化けていたのね)
先程まで沸騰しそうだった心臓が、徐々に収まっていくのを感じていた。私はようやく深呼吸をし、心を落ち着かせる。
「エリスさん〜大丈夫ですか〜? なんだか顔色が〜悪いようですけど〜」
「だ、大丈夫よ。ちょっとビックリしただけだから。……でも魔物、だったのね」
モンクは横たわっている胴体へ歩み寄ると、片腕だけで軽々と担ぎ上げ、周囲へ素早く目を配った。
見物していた群衆たちは刃物のような視線に畏怖したのか、自然と左右へ立ち退いていく。
彼女は割れた道筋へ歩みを進めると、何事もなかったかのように颯爽と立ち去っていった。
周囲の野次馬たちはこの一連の行動を、呆気に取られながら見ているだけだった。勿論私もその一部だ。
「エリスさん〜立ってください〜。そろそろ行かないと〜日が暮れてしまいますよ〜。アレックスさんたちも〜待ちくたびれているかもしれません〜」
座り込んだ姿勢のままでいる私にエドは声を掛けてきたが、その場を動くことができなかった。何故なら。
「エドごめん……腰、抜けた」