ゼロクエスト ~第2部 異なる者

第2節 接近

あたしは左眼に違和感を抱くと、眼帯の上から手で押さえ付けた。

瞳の中を小さな虫が、無数に這いずり回っているような不快感。

いつもの感覚だった。

すると目の前の木陰から現れたのは、2体のゴブリン。先程から戦っているのは、殆どこの種類だ。

いくらこの辺りが奴らの縄張りだとはいえ、前に来た時よりも数が多すぎる。やはりモンスター・ミストの影響が現れているせいなのだろう。





サラに遭遇してから1日が過ぎていた。

奴に精神攻撃を受けてから徐々に体力は回復しているが、それでもいつもより移動速度は落ちている。

通常であれば、既にアクニカ村へ到着していても良いはずだった。

あたしはいつものように其奴らを軽く片付けると、視界を遮っている乱れた前髪を掻き上げた。同時に左眼を覆っている眼帯にも、そっと手を触れてみる。

いつもの違和感は消えている。

「眼はいつも通り、か」
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