恋人ごっこ



 「文哉!ねえ、文哉ってば!」



 何度呼んでもシカト。
 そして着いたのは文哉の家だった。


 文哉は家に入るなり玄関の鍵を閉め、あたしを引っ張って2階へと上がっていく。


 「ちょっと・・・手、痛いよ・・・」



 わけがわからない。
 キスマーク一つで文哉が動揺するなんて考えられない。


 気付けば文哉の部屋に導かれていた。
 そして手を離す代わりに押し倒されていたんだ。



 「唯、お前どういうつもり?」



 あまりにも低い第一声だった。



 「な、に?意味わかんない・・・。離してよ」



 文哉のギュッと押さえつける手に力が入った気がした。


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