ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
バドはラシードから数メートル離れた場所で立ち止まると、片膝立ちし、右手を腰の後ろに置き、左手は胸の前で水平に掲げ頭(こうべ)を垂れた。


レオも見よう見まねで同じ所作をした。


「おもてを上げよ」


ラシードのよく通る声が王座の間に響き渡った。


その声で一瞬にして空気がピリリと緊張感に包まれる。


バドが頭を上げたことを横目で見てから、レオも顔を上げた。


間近で見る王の顔はとても整っていた。


どことなくヴラドに雰囲気が似ている。


しかしヴラドは圧倒的な威圧感があるが、目の前の王は微笑をたたえ、優しげに見えた。


「よくぞ戻ってきたな、レオ。余はお前を歓迎する」


ラシードの言葉に、小さなざわめきが起こった。


レオは分かっていないが、王が歓迎するということは絶大な権力をレオに与えるという意味に等しかった。


「どうだ、魔界には慣れたか?」


「いえ、まだ目覚めたばかりなので……」


「おお、そうだったな。色々と戸惑うこともあろうが、じきに慣れる。
たくさん学ぶがよい」


「……はい」


「なんといってもお前は王子。王家の血を継ぐたった一人の後継者なのだから。
立派な王になるよう、学ぶことがたくさんあるぞ」


「……はい?」


ラシードの言葉にレオは思い切り眉根を寄せて聞き返した。
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