ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「あいつ人間の血を出しやがった!」


「気持ちは分かるけど、こんな所で喧嘩するのは勘弁してくれや」


「なんなんだ、ここ(魔界)は! 
人間をなんだと思ってるんだ!
こんな扱い、赤銀と同じじゃないか!」


レオの途切れることのない悪態に付き合いながら、日向は「まあまあ」と言って宥めながら歩いていた。


「日向は腹が立たないのか!?」


「そりゃ当然腹立つけどな……」


そうして二人が連れ立って歩いていると、遠くから女性の悲鳴が聞こえた。


二人は一瞬見つめ合い、すぐに悲鳴の聞こえた方へと走った。


そこには震えながら子供を守るように抱きかかえ、地面に座りこんでいる女がいた。


肌の色が緑色で三つ編みのように一つに纏められた長い髪は大蛇だった。


その蛇が「シャー」と言いながら威嚇している。


その親子は、レオと日向が街に来て初めて見かけたコクーンだった。


蛇の威嚇先を見ると、そこには顔が真っ白で目が窪み、薄気味悪い笑みを浮かべているヴァンパイアがいた。


オールバックの髪に礼服を着て顔は整っているが、その尋常ではない様子は、人間の血を吸いすぎ凶暴になった赤銀に似ていた。
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