ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「嫌―――――――っ!」


茜は手を天井に向けながら目を覚ました。


目尻には涙が伝っていた。


「あれ? 夢……?」


茜が茫然と天井を見上げながら夢の余韻に浸っていると、部屋のドアが開いた。


「大声なんか出してどうしたの!?」


茜の母親が心配そうな顔をして現れた。


「夢……見てたみたい」


「怖い夢?」


怖い、という気持ちではなかったけれど、あの夢をどう表現すればいいのか分からず、茜は否定せずに頷いた。


「あんな事故の後だものね」


茜の母親はため息を一つ零した。


(……あんな事故?)


茜は母親が言っている意味が分からなかった。


けれど心配そうに茜を労わる母親を見ていると、そういえば事故があったような気がしてきた。


けれど、どんな事故があったのか思い出せなかった。


「事故って……なんだっけ?」


すると茜の母親の眉が寄った。


心配そうに茜を見つめる。


「生徒会の役員メンバーが車で事故を起こして全員亡くなってしまったことよ」
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