ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
とても優しい母親だった。


血の繋がっていない日向を、自分の息子のように接し育ててくれた。


謙太が生まれてからは、少し戸惑う素振りを見せたこともあったけれど、日向のことを考え十分に愛情を持って接してくれているということは不器用ながらも伝わってきた。


(やっぱり、覚えてへんよな。
これでいいんや。これで……)


日向は母親に会釈し、謙太を降ろした。


「ほら、母ちゃんとこ行け」


「うん。お兄ちゃん、また会える?」


謙太は寂しそうな瞳で日向を見上げた。


その瞳を見ると、キュンっと胸が押し潰されそうになる。


「……会えるで。きっとな」


日向は謙太の頭を撫でた。


謙太は嬉しそうに笑い、そして母親の元へ走っていった。
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