ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「すみません。謙太が遊んでもらったみたいで」


「ええんです、ええんです。それじゃ」


日向は二人に背を向けて、手を振り歩き出した。


二人を見ていると、泣いてしまいそうだったからだ。


謙太の母親は、日向の背中を見ながら、不思議な懐かしさを感じていた。


「ママ、僕お兄ちゃん欲しい」


突然の言葉に、謙太の母親は困ったように笑った。


「お兄ちゃんは無理よ」


「どうして?」


「どうしても。

……でも、謙太にもあんなお兄ちゃんがいたら良かったのにね」


親子は、消え行く日向の背中をずっと見つめていた。

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