ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
突風が生徒会室を震撼させた。


ガラス戸が震え、今にも粉々に砕け散りそうだった。


風が竜巻のように舞い上がり、赤銀に襲いかかる。


「な、何が起こった!?」


赤銀が目を丸めて辺りを見渡すと、ドアが風によって物凄い勢いで開き、そこから一人の男が姿を現した。


オリーブ色の双眸に黒い燕尾服。


姿勢良く佇むその瞳からは怒りが滲み出ていた。


風によって我に返った怜央は、すんでの所で首筋から唇を離した。


赤銀が言葉を失って見詰める視線の先に目をやると、バド・ツェリスと名乗った不思議な執事がそこにはいた。


「いけませんね、無理やり怜央様を覚醒させようとするなんて。

あまりおいたが過ぎますと、今ここで灰にしてしまいましょうか」


丁寧な口調のわりに、言ってることは実に残酷だった。


バド・ツェリスは足を動かすことなく生徒会室に入っていった。


まるで浮きながら進んでいるように見えた。
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