ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「怜央ちゃん……」


再び怜央の元へ行こうとする茜を、日向は止めようとした。


「行ったらあかん!」


その制止さえも振り切って、茜は怜央の元へ駆け寄った。


片足を引きずっていた。壁に打ち付けられた衝撃で、痛めたらしい。


倒れ込むように怜央を再び抱きしめると、怜央の瞳がわずかに揺れた。


『俺に近付くな』


「嫌! 戻ってきて!怜央ちゃん!」


茜の叫びは、怜央のわずかに残っている人間の心に温かく響いた。


でも、茜の側にはいてあげれない。


そう思うと、わずかに残っていた温かい心も、冷たく凍っていくようだった。


「怜央ちゃん……怜央ちゃん……」


怜央にしがみ付き、泣きながら名前を呼ぶ。


行ってしまわぬように。


消えてしまわぬように。
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