蹴球魂!!!!
その、時だった。


ーピピーッ

「ぐ…」


審判のホイッスルが、鳴り響いた。


「あ、ごめんねぇ、ぶつかってたぁ~??」

わざとらしく、ニタニタと不気味な笑みを浮かべながらそう言うあいつ。

明らかに故意的なファール。


「イエローカード!!」

ビッと、審判がイエローカードを空へと突き出す。


だけど、奴のプレーはレッドカード並みだった。


その証拠に、まったく動けない飛鳥。

ぶつかられた右足を押さえて顔を歪めたまま、一向に立ち上がれない。

そんな飛鳥の姿にプレーは止まり、ドクターがピッチへと入ってきた。


ざわつく観客。


隣高はただ黙ってニヤニヤしていた。

その姿にイラついたのは、あたしだけじゃなかった。


「飛鳥…!!」

ドクターが離れて、飛鳥のもとへ駆け寄る。

「飛鳥、やっぱり無理しないでベンチに…」

「でも…平気っす」

「でも、じゃない。だって飛鳥の右足は…」

「っ…大輔先輩!!」

「わっ、悪ぃ」


…なんかおかしい。


「俺は何と言われようと出ますよ。西高だけはぶっ潰します」

「でも右足、キツいんだろ!?」

「こんなん蚊に刺されたようなものです!!」


その目はまっすぐで、曇りひとつなくて。


「西高を倒したいんです…。俺を外さないでください…」

「……わかった」


その言葉に反抗できる人なんて、1人もいなかった。
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