大嫌いだから、ね?(短編)
 一組と七組。

 距離が離れているせいか、整列して、周囲を見渡しても、光くんの姿は見当たらなかった。



 でも、安心はできない。

 これから、三年間、光くんが同じ学校に通うと思うと・・・戦々恐々として背筋が震えた。

 幼稚園の三年間。泥だんご、ちょうちょ、かまきり、いろいろなことを思い出して、頭がくらくらする。



 これからどうしよう。


 
 頭まっしろで、パイプ椅子に座ったまま、考え込んでいた私、後ろからつんとつつかれて、はっと現実に戻った。



「どうしたのよ? 陽菜、次、あんたの出番でしょう。ぼ~っとして、どうしたのよ」



 ささやくような声で、後ろの席の、親友理佳(リカ)が心配そうに言う。

 そうだった。

 新入生代表としての挨拶で、女子は私だった。

 

「代表・・・今から変われないかなぁ」

「無理に決まってるでしょ」



 そうだよね。

 挨拶なんてしちゃったら、もうばっちり、光くんに私のことわかっちゃうよ。

 でも、仕方がない。

 
 壇上では男子の代表が挨拶をしている。

 黒い髪、黒い目をした、優しそうな雰囲気の人だ。

 よどみない声で、手にもった紙に目を落とすことなく、話している。




 


 

 

 
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