僕が彼女といる理由

ドアを開けた瞬間
フワッと香るのは

なんの香りなんだろうか…

百合は香水はつけないから

”人の家の匂い”ってやつか…?


僕はその暖かく優しい匂いのなかで

百合の吸わない煙草の匂いを

かすかに感じた。



僕は自分の部屋のように
手慣れた手つきでお酒やらを冷蔵庫にしまい

百合に一本差し出すと、


『…あんたも自分の家みたいに
手慣れてしまうのね』


あはは、と笑う百合に
何も言わずに自分の缶をあける。



”あんたも”って…



この煙草の匂いの持ち主も
もう手慣れた手つきでお前の部屋を
出入りしてるのか?



『…百合、…ゆ』



プルル…



百合の携帯が鳴った。



『…!ちょっとごめん…』



百合は携帯をとり
話しはじめた。明らかに僕を気にしながら。



『…もしもし?どうしたの?』



相手の声は聞こえないけど
相手は幸森さんだと解った。





…陽太の時と似た雰囲気を出してるから。





『…!?え?今日??

…あ〜、今日じゃないとダメ…?』



”解った”と言って電話を切った百合は

若干気まずそうに



『…幸森さんがちょっとくる』



…………は?



…いやいやいやいや、、、



俺、帰った方がよくないか?
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