僕が彼女といる理由

百合に口づけた瞬間、
僕の心臓はドクリッと
静かだけど深い音をたてた。



ピシッ…



何かに亀裂が入ったような音を
聞いた気がして…





あれ…?







視界に映るすべてが



揺らめいた。








頬を一筋雫が伝う









”『大切にする』は

その周りのモノも全て愛すことだよ”





……陽太!







涙は溢れるようにボロボロとでてきた。








僕はバカだ…。






陽太を失って

バランスを崩したのは百合じゃない


僕の方だったんだ。






あの温かで

僕の唯一信頼できる

安心できる居場所だった。





百合を繋ぎ止めることで

またそこに戻れる気でいた…





陽太を失ったことを

一番受け入れてなかったのは

僕の方だったんだ…。








僕は陽太を失って
初めて泣くことができた。







< 63 / 84 >

この作品をシェア

pagetop