例えば私がアリスなら
自分で言うのもあれだけど、私は結構常識人だと思う。
しかし、そんな普段の私からは考えられないような台詞を口走っていた。
「…………そう、」
一番近くにいる女の子が「え?」と聞き返してくる。
言い直すのが若干恥ずかしい。
「……私は、アリス」
言った。
するとどうだろう。
私以外の三人は口をポカンと開けて目を見開き、固まってしまった。
……そっちから聞いておいて、そこまで驚いちゃいますか。
三人の視線が私に集中して居心地悪いものの、心の奥では次の展開にドキドキしていた。
アリス、だなんて馬鹿みたいな話だけど、でも
「…………本当に、アリスなの?」
女の子は確認するように聞き返してくる。
そんなに信じられないか。まあ嘘だしね。
ここまできたら後戻りは出来ない。頷くしかなかった。
「……そ、そうだよ」
「嘘だね」
「えっ?!」
そう言い切ったのは、眠りネズミらしき男の子。
さっきの驚きの表情はどこへやら、最初のツーンとした無表情に戻っている。
「あんたがアリスって言うの?
嘘でしょ。アリスなわけがない」
妙に核心づいたように否定の言葉を飛ばしてくる。
ななな、なんで分かったぁあ!?
なんて言えるはずもなく、あくまでもとぼける方向で突き通すことにした。
「は、は?なんで君がそんなこと言い切れるの?
私の何を知ってるっていうわけ?」
「知らないよ。だっておかしいし」
「な、何が……」
背中に嫌な汗をかきつつ、男の子の次の言葉を待った。
「だって、今まで「アリス?」って聞かれて肯定する人なんて居なかったし」
今まで?
「「私はアリスなんて名前じゃない」って言ってたよ。
まあそうだろうね。本当に“アリス”って名前の人が来るなんて確率かなり低いし。
あんた、アリスって顔じゃないし」
…………穴があったら埋まってしまいたい。