例えば私がアリスなら



しかし後輩はニコニコ(ニヤニヤ)しながらケータイで私を写メる。
こいつ絶対面白がってる!



「誰もそんな細かいこと気になんかしませんって」


「ピンクい白兎なんて大問題だよ!!」


「お腹の部分は白いし、大丈夫ですって」



駄目!この人テキトー過ぎる!!


重いし暑いし。立派な着ぐるみなのに顔の部分だけご丁寧に丸く切り抜かれた式の着ぐるみって辺りがもろウケ狙いだし。

私が着ぐるみ着てるってもろバレじゃん!


「それにほら。顔はちゃんと出てますし。
目立ちますよ、先輩だって。俺気が利くー」


「いっそ全て隠せよ!!しかもこれは何!?」


首からだらんと頼りなく下げられてる物体を、ミトンっぽくて掴みにくいウサギちゃんの手で掴んで突き出す。



「何って、白兎の定番じゃないですか。懐中時計」


「どっからどう見てもストップウォッチだよ!!!」


ストップウォッチ定番って何だよ!
50メートル走のタイム計る兎こそ世界中のどこ探せば見つかるんだよ!!


「どっちもウォッチですし、一緒ですって」


「動いてるかストップしてるかって結構大きな違いだと思うんだよね」



時刻わかんないじゃん。
遅刻してしまうーってそうか!走りながら自分が何分で目的地まで行けるか測定してるんだね、ってわけあるかぁあああ!!


「だってそれしか無かったんですもん」

そこを何とかするのが衣装係でしょう。


「それにそっちのがインパクトあるし」


うん、狙いはそれだよね、君。




あまりのテキトーさに苛々してきていると、可愛らしいアリス(結菜)がトコトコっと近寄ってきた。

おい、なんでアリスの衣装はフリルだのリボンだの細部までこだわってんだよ!
私のこの着ぐるみとの差は何だよ!ちぐはぐ過ぎるよ!!


「まあまあ、ウサ耳だけとかよりもリアルでいいんじゃない?」

こんなリアルさ求めてない。


「大丈夫!似合ってるから!」


そんな可愛い笑顔で言われても嬉しくないっ!!



「そうそう。お似合いですよ」

お前、黙れよ。

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