恋愛事情
そこには
大きな、象の形をした
すべり台があって
土台の部分には、
子どもが通れるくらいの
丸いトンネルがあった。
彼は、あたしを
そのトンネルの端に
座らせた。
「よっ…と…
うん、ここなら
少しは風が防げるだろ?」
確かめるように
自分の手をかざしながら
そう言って、
すぐ側の芝生の上に
あたしと向き合うように
座った。
やっと下ろしてもらえて
ホッとしたあたしは
彼と目が合った瞬間
その腕に
抱き上げられていた事を
再び意識し始めて
ドキドキしながら
顔を赤らめて俯く。
「ごめんな」
「えっ?」
「俺、ちょっと強引だった
かもしれないけど…
それくらいしなきゃ
真優花が何も話して
くれないと思って…」
彼の言葉に
ゆっくり顔を上げると
あたしを
じっと見つめる彼と
また目が合った…
「悠斗は…
あーゆー事して…
平気なの?」
「ん?あーゆー事って?」
「だから…その…
だ…抱っことか…」
一瞬
驚いた表情になった後
少し笑って、彼は言った。
「全然…
平気なわけ、ないじゃん!
俺の心臓、
すっげーバクバクしてたの
気がつかなかった?」
「…わかんないよ…
自分がドキドキしてたもん
それに、悠斗…
慣れてるっぽかったし」
「げ…そんな風に
思われたんだ…?」
「だって…普通…
やらなくない?
何か…特別な時以外は…」
「真優花は、俺にとって
特別な存在だから…
やってもよくない?」
「そ…
そーゆー意味じゃなくて」
「んー…
今日の話をまとめると
つまり真優花は…
俺が、すっげー軽い奴で
おまけに浮気者だって…
思ってるわけだ…?」
「え!ち、ちが…」
違う
と言いかけて…
ホントに
そう言い切れるのか
わからなくなった…