当たらない天気予報
グッバイ、エンドレスサマー
学校から帰ってくるなり、お母さんに「駿(しゅん)君が待ってるわよ」と言われて、ああそっか今日は夏休み最後の日。








「可奈子、お帰りー!」


自分の部屋に入ると、うちの母親から出された麦茶をすっかり飲み干して手持ち無沙汰なご様子の駿が、あたしを元気良く迎えてくれた。


「…宿題、でしょ?」


向こうから言い出す前に奴の用件をずばり言い当ててしまうと、駿は「あはは、分かるー?」って悪びれる様子が微塵もない。


「なんで学校違うのに、あたしがあんたの面倒見なきゃいけないの…」

「えぇー?それはさ、だってほら、ガキの頃からの年間行事?」

「勝手に年間行事にしないで下さい」


あたしは自分の鞄を机の上に投げて、そのままベッドに腰を下ろした。
ついでに、床に置きっぱなしの氷だけが残ったグラスを机の端っこへ。




駿は、すぐ近所に住んでる男の子。
中学まではおんなじ学校に通ってた。
駿のお母さんとうちのお母さんが仲良くて、物心ついた時からよく一緒に遊んでたし、未だに結構お互いの家を行き来してる。
高校になって初めてばらばらになったけど、それでもあたし達はよく遊んだ。
遊ぶって言っても、夜中に近所のファミレス行ってドリンクバーだけでずっとだらだら喋ってるような、そんなことしかしてないけど。


駿には、あたしにひとつだけ頭が上がらないことがある。
それは、小学生の時から今に至るまで、長期休みの最後にあたしが駿の宿題を手伝ってること。
小学生の頃は、代わりに夏休みの自由研究や絵日記を手伝って貰ったりしたけど、中学になってしまえば自由研究も絵日記もない。
それでもあたしが駿の面倒を見てしまうのは、駿に「可奈子助けて!」って眉尻を下げて言われると、しょうがない奴って思いながらも断れないから。
しかもあたしは、駿が夏休み最後の日になって泣き付いてくることを想定して、夏休み最後の前の週には自分の宿題を全て片付けてる。
しかし不思議と、駿はそんなことくらいしかあたしを頼りにしなかった。
普通の宿題は自分でやるし、テスト勉強も、よっぽど成績がやばい時じゃなきゃあたしのところに来ない。
単に、宿題もテストも放棄してるだけなんだろうけどね。
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