マバユキクラヤミ
「…アイちゃん、あの、ね、」
「アイにまた会いたい?じゃ、明日も公園に来てね。約束。」
 戸惑いの中でやっと見つけたボクの言葉を遮って、アイは勝手に再会の約束をしてしまった。そして、胸の高鳴りと息苦しさに身動きの取れないボクの背中をそっと撫でながら、
「じゃあね、お兄ちゃん。また明日ね。」
と言って離れていった。
 アイがボクの背中に別れを告げた後も、ボクは振り向くことさえ出来なかった。ボクの背中に柔らかな体温と感触が、耳元に粘る吐息と声が、当分の間残っていた。
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