。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
*鴇田Side*
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―* 鴇田Side *―
―**朔羅と戒がラブってるその一方です**―
俺の運転する車は緩やかに国道を走っている。
青龍会本部からの帰り道だった。
いつもなら100キロ近くスピードを出せる道が、僅かな渋滞のせいか50キロ程しか出ない。
このスピードは、俺の思考をゆらゆらと絡めるのに丁度いい速さだった。
流れる景色を眺めながらハンドルを握り、俺は昨夜のことを思い出していた。
昨日―――
この頃すっかり陽が落ちるのが遅くなって、辺りはまだほの明るい時間帯だった。
青龍会本部の庭で、蝉が僅かな鳴き声を発しているのを聞き、俺はあの長い廊下を歩いた。
御簾の掛かった、あの神秘的で不思議な回廊を。
薄紫をした空の色が年代を思わせる古い畳や柱、ずらりと掛かる御簾に反射してた。
その御簾の隙間から、廊下に真っ白な腕が伸びていて、俺は柄にもなくぎょっとした。
生気を失ったような青白い腕は上を向いていて、まるでバラバラ死体の一部のように思えたからだ。
だけどその腕がすぐに誰のものか分かった。
俺は腕の前で足取りを止めると、御簾の向こう側に向かって
「イチ………」
と、声を掛けた。
イチ…いや一結の腕も指先も、ぴくりとも動かない。
「イチ。何してるんだ」
もう一度呼んでみると、
「聞こえてるよ。煩いな」とそっけない声が聞こえてきて、腕が御簾の向こう側に引っ込んだ。