。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「こんなところで何をやってる。昼寝でもしてたか?」


俺の問いにイチはふふっと小さく笑って、「死体ごっこ」と言い放った。


「死体ごっこ?」


「そ。もうそろそろあんたが来る頃だろうと思って。びっくりした?」


正直一瞬驚いたが、俺はそれに何も返さなかった。


イチはつまらなさそうに吐息を吐いて、それでも御簾の下から指の先をちょっとだけ覗かせる。


「こうやってさ…」


白い手の甲が出てきて、やがてにゅっと腕までも露になるとイチは手を床に這わせた。


俺の足元までその手を這わせると、予告もなしに俺の足首を掴む。


少しだけ驚いて思わず背を反らす。


「ね?びっくりしたでしょ?って言うかちょっとホラーじゃない?」


イチは何が可笑しいのかクスクス笑っている。


「まぁ確かにな」


俺は曖昧に返して、腰を屈めるとイチの手が引っ込む前にその手首を掴んだ。


「何するのよ」


イチの不機嫌そうな声が返ってきても、俺はその力を緩めなかった。


「お嬢に……朔羅さんに会ったそうだな」


低く問いかけると、イチは黙り込んだ。


御簾がかかっていて顔が見えないから表情まで読めない。


だけど少しばかり動揺してはいるようだ。


「琢磨サンがあんたに言ったの?相変わらずのフットワークね」


あーあ、ヤんなっちゃう。


イチは全然反省してないように、吐息をついた。


今、下手にイチがお嬢に接触する事態を避けたかっただけに―――俺は苛々と怒りを募らせた。


少しばかり乱暴にイチの手を引っ張ると、






「何故お嬢の前に姿を現した!」と声を荒げた。






< 198 / 592 >

この作品をシェア

pagetop