。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。

*一結Side*



◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.◆

.。*†*。. 一結Side .。*†*。.





遠くで雷鳴が轟いている。


高層ホテルの客室の窓を打ち付けるのは激しい雨粒だった。


晴れていたら、さぞかしきれいな夜景が見下ろせるだろうに、今日は生憎の天気だ。


水滴が流れ落ちる窓の外では、まるで水中にいるかのように景色を歪ませていた。


おまけにさっきの停電のせいで、街はほとんどといって良いほどの電力を失っていた。


煌びやかな東京の街は薄暗く、


急に東京が薄汚れた街に見えてきて、あたしの心に寒々と風が吹いた。


前はこの大都市に出てくるのが憧れだった。あたしの育った片田舎ではなく、そこは夢と希望が詰まった場所だと思っていた。


そこに行けば、ほしいものを手に入れられると思った。


でも実際は、天災によって、たった一つの落雷によって電力さえも失ってしまうほどヤワくて脆い街。




幸いにもこのホテルは自家発電装置があるらしく、すぐに停電は復旧した。


ピンポーン…


部屋に無機質なインターホンが鳴り響き、あたしは振り返った。


ドアスコープから覗くと、男が一人こちらを覗いている。


ちょっと苦笑しながら、あたしはドアを開けた。


「待ってたわ」


笑顔で出迎えると、背の高い男は頭から水を被ったような全身びしょ濡れのまま遠慮なく部屋に入ってくる。


「この雨の中来るのが大変だったよ」と笑いながらもさりげなくチクリと嫌味を言われて、あたしは肩をすくめて見せた。


「シャワーでも浴びる?風邪ひくわ。あたしのせいだって後から言われると困るから」


あたしの言葉に男はうっすらと笑い、手を振った。


「いや。遠慮しておくよ。悪いけどタオルだけ貸してくれないか?」


「一回1万円ね」


今度は男が肩をすくめる番だった。







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