。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


この男と出会ったのはほんの数ヶ月前。


出逢いは偶然で……でも、必然だったのかも。


ロマンチックな物言いをしたけれど、あたしはこの男に何の感情も持ち得ていない。


向こうも同じ。


あたしたちの関係は―――そうね、敢えて言うならば……



“共犯者”



かしら。



あたしとこの男の目的がたまたま一致しただけ。だから手を組んでお互いの情報を交換してる。


男は濡れたスーツの上着を脱ぐと、タオルで乱暴に頭を拭きながらソファに腰掛けた。


「シャンパンでも飲む?ルームサービスだけど」


あたしがメニュー表を取って寄越すと、男は興味深そうにあたしを見て、唇に薄い笑みを湛えた。


「随分魅力的な提案だが、止しておこう」


「泊まっていかないの?この雨の中また帰るつもり?」


あたしは感情のない目を窓の外に向けると、男もそれに倣った。


「そうだな…君の話次第にしようか。面白くなりそうだったら長引くだろうしね」


「つまらなかったらすぐ帰る?」


挑発するようにちょっと笑うと、男はやんわりと笑顔を返してきた。


「君次第だ」


その笑顔はちょっと色っぽくて、酷い男だと知らなかったら、少し……


惹かれてたかもね。


「じゃぁ帰りたくないって思わせないとね」






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