。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
少し押したら簡単に堕ちるタイプだと思ったのに、意外とガードが固い。
「押してもダメなら引いてみるだけ。
いいだけ焦らして、向こうからあたしに会いたいと思わせる」
あたしの答えに男はちょっと笑った。
「そんなにうまくいくかな」
あたしは心外そうに表情を歪めて男を睨むと、それでもすぐに笑顔を取り繕った。
「お互い信じあっていればいるほど、絆が深ければ深いほど―――案外脆いものよ」
あたしは笑みを浮かべて、フルーツ盛りのきれいにカットされたパインをアイスピックで刺した。
宙でちょっと振り回すと、
「あたしが二人の仲を壊す」
「そうすれば青龍と白虎の盃の件はなくなる?そう考えてるのか?随分安直だな」
「そこまで考えてなかったわ。盃の件がなくなれば、確かに今の極道会を統治するのは難しいけれど、突破口がないわけではない」
「目的は青龍、白虎の崩壊だ。潰すときはとことんやってもらわないと」
「分かってるわよ。だから最後にこの二人を残してあるの」
あたしはアイスピックで刺したパインを口に入れると、そのピックの先端で龍崎会長、そして鴇田組長を指し示した。
「とにかく、三対三でも今はこの二組が纏まってるからダメなのよ」
並べた6枚の写真をあたしはテーブルの上で混ぜた。シャッフルされた写真は見事に違う場所に移動した。
「まずは守りを崩す」
「なるほどね。だから虎間と龍崎 朔羅なのか」
「ええ。でもあたし独りの力じゃ無理だから、こいつに手伝ってもらわなきゃね」
あたしは少し笑みを漏らして鷹雄 響輔の写真を引き抜き、男の前に写真を差し出した。