。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


戸惑った男を強引に抱きしめて、男の背後に映った龍崎 朔羅の方をちらりと窺うと―――彼女は慌てて視線を逸らし、足早に去っていった。


何も知らないただの女子高生かと思っていたのに―――あの視線は只者が見せる目じゃなかった。


あなどれない子ね。


そう思いながら唇を離す。


「「…………」」


目の前の男と無言で見詰め合って、少しの沈黙が流れ、そして同じタイミングで口元を拭った。


そして目の前のグラスに入った飲み物を一気飲みするのも同じタイミング。


「何よ、人をバイ菌扱いして」


「そっちこそ」と男はふっと笑った。


再三言うが、あたしとこいつとは恋人関係でもなんでもない。


こいつがあたしの泊るホテルの部屋に泊っていったこともあるけど、男女の艶かしい雰囲気にもならなかった。


同じベッドで眠っても、お互い少しも意識をしていない。手を出されることもなければ、こちらから仕掛ける気分にもならなかった。


大体タイプじゃないし、特別気が合うわけでもない。






そう―――こいつは協力者以外何者でもない。お互いの利害が一致しただけ。






あたしの好みのタイプは―――





そうね……虎間 戒みたいな男かしら。





こんな間柄でなければ、彼に惹かれていたと思うし、もっと純粋に彼のことを知りたいと思う。それぐらい彼には惹かれる何かが備わっていた。


そう、あたしは彼の基本的なデータを入手したけど、彼の考えてることや本質は実はよく知らない。




「深く知るのは―――ベッドで、かしらね♪」




意味深に笑みを浮かべたあたしに、


「大胆な発言だな。でもそうゆう過激な女は嫌いじゃない」


男は口元に薄い笑みを浮かべた。


あたしはちょっと肩をすくめただけに留めておいて、それ以上深くは考えを伝えるつもりはなかった。


虎間 戒を誘惑して、朔羅との間とを壊す―――なんて安易な考えだけど、だけどあの二人にはきっと絶大な効果がある筈。



それにはやっぱり鷹雄に協力してもらう必要がある―――





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