。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「って言うかこれは私が来る意味ってあるのかい?」男が聞いてくる。


「大ありよ。女が一人でカラオケなんて目立つじゃない。カップルとして入れば目立たないし、自然よ」


「なるほどね」と男の目はちょっと笑った。そのときだった。


ドアの細いガラスの向こうで、鷹雄 響輔が近くのトイレに入って行く姿が見えた。


遠くからだからあんまり分からなかったけど、あまり楽しそうではなかった。


そのあと10分ほどして龍崎 朔羅が追いかけてきた。


見知らぬ大学生らしい男が龍崎 朔羅を………どうやらナンパしてるみたい。


鷹雄 響輔が出てくるとナンパ男たちは逃げて行き、二人は二言、三言交わし、突然―――


鷹雄が朔羅を前から抱きしめた。


「あら~?♪何やらアヤシイ雰囲気♪」持っていたデジカメでシャッターを切ると、一瞬だけ鷹雄がこちらを向いた気がするけど、あたしたちに気付いた様子はない。


フラッシュもたかなかったし、シャッター音は流れている音楽で消える。


気付く筈がない。


「うまく撮れた?」と男がデジカメを覗き込み、


「ばっちり♪」と答えると、二人はもう離れていた。


「なによ~どっかに連れ込もうって寸法はないわけ??」あたしが不服そうに漏らすと、男は苦笑い。


「自分で言ったじゃないか。龍崎 朔羅に対してはストイックだって」


「それはそうだけど……」


と言いかけたとき、朔羅が振り返った。


何かを探すように視線をきょろきょろさせあたしたちの部屋をちょっと見る。


あの大きな猫のような目を細めて―――だけど、その視線は猫と言うよりも、獲物を探す豹のように鋭く光っていた。


「ちょっと顔貸して」


あたしは慌てて男を引き寄せると、強引に彼を抱きしめて



口付けを交わした。





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