。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
俺は素手で銃口を塞いだ。
「残念だが弾は抜いてある。お前が居る前でそれと分かる凶器を置いておく筈がないだろ?」
ちょっと笑って銃口を自分の方に引き寄せると、イチは目を開いてくやしそうに唇を噛み締めた。
俺はイチから乱暴に銃を奪った。
「大人をからかうんじゃねぇ」そう言って銃を再び上着にしまいこむと、今度こそバスルームに向かおうとした。
その動きをまたもイチが阻む。
俺の前に立ちはだかると、今度は俺の口元にそっと指を這わした。
冷たい指先だった。
会長のそれと温度も違う―――ひやりとした感触……
「……怪我…してる。龍崎会長にやられたの?」
「お前がしむけたんだろ。殴られただけで済んだのが奇跡的だ」
ぞんざいに言って俺はイチの手から逃れると、乱暴に顔を背けた。
「ふぅん?指は?」
楽しそうに声を弾ませて、俺の手を取ってきて俺は今度こそ諦めたように肩を落とした。
「骨にヒビが入った程度だ。折られる寸ででお嬢が……朔羅さんが止めてくれた…」
俺の答えにイチが意外そうに目を開いてまばたきをする。
「へぇ…それも意外な展開。あの子があんたの味方を……ねぇ」
意味深に笑うと、イチは興味深そうに目を細めた。
「俺の味方をしたわけじゃないだろう。あの場にはお嬢の友達…カタギの娘も居たから、そんな悲惨なところを見せたくなかったんじゃないか?」
そっけなく言って俺はネクタイをむしりとった。
ネクタイを手にして―――お嬢の首元を絞めたときの感触を……ふいに思い出した。